ring ring ring
 それっきり、わたしたちは黙って並んでいた。
 ただ目の前に広がる東京の海がだんだんオレンジ色に染まるのを、じっと見ていた。
 やがて、どのくらい時間が経ったのかもわからなくなった頃、すっかり落ち着きを取り戻していた高林くんが呟いた。
 「いいっすね、高林美波」
 穏やかな声が、波の音に心地よくなじんでいた。
 「でしょ」
 「ですね」
 わたしたちは、顔を見合わせて笑った。
 いつの間にか広場は、たくさんのカップルや家族連れで賑わっていた。誰もが幸せそうに、休日の夕暮れを歩いていた。
 「じゃ、指輪でも買いに行きますか」
 ベンチから立ち上がった高林くんが、わたしに手を伸ばした。彼の頬が赤いのは、夕日に照らされているからなのか、照れているからなのか。
 「うん」
 「そのかわり、岡田さんのときみたいに立派なのは買えませんよ」
 「いいの。一平くんが買ってくれるなら、おもちゃでもいい」
 わたしはその大きな手を取って、歩き出す。
 薬指に、永遠の輝きを与えるために。
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