ring ring ring
 さっきよりも少し風が出てきて、海面に時折、白い波が立つようになった。依然として陽射しは強いけれど、海風が火照る肌を冷ましてくれる。
 「わたしの名前、海野美波っていうんだけど」
 「知ってます」
 「親がどういうつもりで名付けたか知らないけど、アニメキャラみたいじゃない」
 高林くんは、声をあげて笑って、
 「まあ、そうっすね。でもいいじゃないですか、海の美しい波」
 眩しそうに目を細めて、海を見た。
 「イヤってわけじゃないんだけどね。でもたとえば、高林美波って名前だったら、山も海も!って感じになっていいなあって思ったりして」
 「えっ、た、高林美波?!」
 高林くんの顔が、ボッと赤くなった。わたしも唐突だったから無理もないけれど、オクテというのは本当らしい。思い返してみれば、忠信さんにからかわれて、真っ赤な顔で半泣きになっていたときもあったっけ。
 「そう、高林美波。どうかな」
 「どう……って……」
 高林くんは、あのときを彷彿とさせる涙目をしていた。
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