ring ring ring
 「そんなこと言われたら、おれ、勘違いしちゃいますよ」
 高林くんが笑う。
 「勘違い?やめてよー、愚痴っちゃってるとはいえ、もうすぐ人妻なんだから」
 わたしは高林くんの肩をばんばん叩いた。酔いが回ってきたようで、妙に楽しくなってきた。こうなったら、とことん高林くんをいじってやろう。
 「高林くんは彼女とかいないの?」
 「えっ、おれの話ですか」
 彼は突然の質問に不意を突かれた顔をしながらも、
 「彼女はいないけど、好きな人はいますね」
 さらりと答えた。
 「えー!誰?はるかちゃん?」
 「はあ?本村?やめてくださいよ、すぐみんなそうやって身近なところでくっつけたがるんだから」
 どうやら他でも言われたことがあるらしく、高林くんは本気で迷惑そうだった。
 「どうして、かわいいじゃない、はるかちゃん」
 「顔はかわいいけど、ほんっと口うるさいんで、そういう風には見れないです。あくまでも、わいわい騒げる同期のひとりですね」
 「ふうん、じゃあ、好きな人って誰?」
 「まだ聞きます?」
 「うん」
 憂鬱だった気持ちが、だんだん軽くなる。やっぱり人の恋愛って楽しい。
< 42 / 161 >

この作品をシェア

pagetop