ring ring ring
 「わたし、好き嫌いがなくて。だから趣味はって聞かれたら、食べることですって答えることにしてるの」
 太らない体質というのも影響していると思う。やっぱりそういうのはひとりの女性として気になるものだから、我ながらいい体質に生まれたものだ。
 「へえ、偶然!おれも趣味は食うことですよ」
 「そうなの?」
 「全っ然好き嫌いがないから、何食ってもうまそうでいいなって友だちに言われるんすよ」
 「わたしと同じ」
 「気が合いますねえ」
 高林くんは、すでにグラスを半分ほど空けていた。なかなかのペースだ。
 「岡田さんも高林くんみたいだったら食事の時間がもっと楽しくなるのにな」
 厳密に言えば、食事だけでなく、もっといろんなことを楽しむことを覚えてほしいというのが本音だ。忠信さんにかかれば、どんな遊びも、楽しむ前に批評が入る。いろんな知識を披露してくれるのはわたしにとっても勉強になるし、客観的に物事を捉えることは大切で、だからそういう慎重なところは将来のパートナーとして信頼できる部分ではあるけれど、いつもそんな調子で、最近はときどき相手をするのが疲れると思うこともある。たまには、無条件に笑って楽しめる時間も必要だ。
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