ring ring ring
 はるかちゃんはこんなにもかわいいのに彼氏をなかなか作らないので、いつも由紀にからかわれてばかりいる。作れないのではなく、作らないのだとわたしは思っていて、たぶんそれは当たっている。だってはるかちゃんのことを狙っている男性社員はひとりやふたりではないし、はるかちゃんに告白してフラれたという話も何度か耳にしたことがあるから。
 「はるかちゃん、理想が高すぎるのよ」
 じゃれ合うふたりに口をはさむと、はるかちゃんはぴたりと動きを止め、
 「それ、よく言われるんですけど、全然そんなことないんですよ〜」
 と唇を尖らせた。
 「そう?じゃあ、どんな人が好きなの」
 「ん〜、元気で、おもしろくて、やさしい人かな」
 「顔は?」
 「顔は案外気にしないんです。今まで付き合った人のタイプもバラバラで、友だちには、あんたの好みがわからないとか言われたことあるくらい」
 これは意外だった。根っからの天然ぶりっ子のはるかちゃんは、きっとイケメンの中のイケメンしか相手にしないのだとばかり思っていた。
 「じゃあ、高林くんとかいいじゃない」
 「え〜、それもみんなに言われるけど、あいつとはそんなんじゃないんですよーだ」
 高林くん……。ふいに由紀の口から出た名前に、わたしの心臓がドキリと反応した。べつにやましい関係ではないのだから意識しなくてもいいのに、あの指輪が今は高林くんの手元にあるのだと思うだけで、常に頭の片隅に彼の姿がちらつく。貴重品を預けているのだから、それが心配なだけだけど。
 「美波……ねえ、美波ったら」
 高林くんのことを考えているうちに、心ここにあらず状態になってしまったらしい。由紀に呼ばれ我に返ると、
 「わたし、サウナ行ってくるから、ふたりも好きに過ごしてて。サウナ出たら戻って来るから」
 由紀は、ちょっとのぼせたのか、赤い顔で露天風呂から立ち上がり、サウナへ向かった。
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