ring ring ring
 「サウナ……。岩盤浴であんなに汗かいた後なのに、元気だね」
 「由紀さんってパワーすごいですよね。体の奥から湧き出るエネルギーっていうか。いつか爆発しちゃうんじゃないかって思います」
 はるかちゃんが心配そうに由紀の後姿を見送っていた。由紀は高校時代にバスケットボール部に所属していたとかで筋肉質な体つきをしている。そのくせ胸は大きくて、きゅっとくぼんだウエストラインは裸になるとなおさら引き立ち、そのメリハリボディは世の女性の理想といえるほどだ。
 あれから夫婦関係がどうなったか、聞けていない。わたしの指輪について由紀が言い出しにくかったのと同じで、やっぱりデリケートな問題だから、由紀から話し出すまではと躊躇してしまう。忠信さんが古田さんに、もっと嫁さんを大事にしろと言ってくれたというし、今は少しでも改善されていることを願うしかない。
 「美波さん、何を考え込んでるんですか」
 「ん〜?いや、由紀のことをね、ちょっと」
 「どうかしました?」
 「由紀って、全然弱音吐かないじゃない。限界ギリギリまでため込んで、そこでやっと打ち明けてくれるところがあって、それが心配だなって」
 はるかちゃんは、わたしの言葉に深く頷いた。
 「弱音って聞いたことないです。わたしは後輩だからかなって思ってたけど、そういうわけじゃなさそうですね」
 後輩に弱音など、由紀の性格が許すはずない。だったらせめて、同期であり親友でもあるわたしのことくらい頼ってくれてもいいのに、頼るのはいつもわたしばかりで、何だか情けない。
< 57 / 161 >

この作品をシェア

pagetop