偽装結婚の行方
そして週末。

俺は尚美達を車で尚美の実家に送り届けると、すぐにUターンして駐車場に車を止め、今度は徒歩で駅へ向かった。真琴を迎えに行くためだ。慌しいが仕方ない。

年末が近く、街を行き交う人がいつもより多く、その足取りが早く感じるのは気のせいじゃないと思う。そういう俺の足取りもそうなのだが。


改札の手前に着いたのは、ほぼ真琴と待ち合わせた時間通りだった。そして、すぐに茶色いコートを着た真琴がやって来た。相変わらず髪は短く、男と間違えられそうな風貌だ。


「やあ、久しぶり」


と挨拶もそこそこに、俺達はアパートに向かって歩き出した。


「駅から近いの?」

「ああ。歩きで10分くらいだ」

「そう? ところでさ、楽しかった?」


不意に真琴が前を向いたままそう聞いてきたが、何の事だろう。何が楽しかったって言うんだ?

もしかして……尚美とのセックスか!?

真っ先に思ったのはソレだが、そんなわけねえよな。


「何が?」

「クリスマス」

「ああ……。まあな」


そう言えば何日か前はクリスマスだった。俺は会社の帰りに小さなケーキとシャンパンを買い、尚美はいつもより少し豪華な晩飯を作ってたっけ。そして二人で「メリークリスマス」なんて言い合ったような、言わなかったような……

それ以外は特に変わった事はしなかったが、多少、クリスマス気分は味わったと思う。


「おまえは?」

「別に。いつもと同じ夜だった」

「あっ……ごめん」


俺はようやくある事に気づき、思わず謝っていた。というのは、クリスマスイブの夜は、いつも真琴のアパートに行ってたんだ。去年までの俺は……

< 73 / 122 >

この作品をシェア

pagetop