偽装結婚の行方
「そういう事だったのかあ。本当の事を確かめないと……」


俺がそう呟くと、


「もう、あんな子の事は忘れたら?」


と真琴は言った。


「いやだね」

「なんでよ。あの子が涼に何て言ったか知らないけど、もう終わった事でしょ?」

「終わってない。終わらせたくないんだ、俺は……」

「なんで? なんでそんなに拘るの?」

「好きだからに決まってんだろ?」

「あんな女のどこがいいの? 他の男の子どもを産んで、一年かそこらで別の男に色目を使ったりして、純情そうな顔して、中身はとんだアバズレじゃないの!」


バシッ。

思わず俺は真琴の頬を平手で叩いてしまった。女性に手を上げたのは初めてで、叩かれた真琴はもちろんだが、叩いた俺も驚いた。


「ご、ごめん」


すぐに謝ったが、真琴は呆然と俺を見つめた後、「うわーん」と泣き出してしまった。


「真琴、ごめん。そんなに痛かったか?」


そう言いながら彼女の頬に触れたら、


「触らないでよ!」


と怒鳴られた。


「真琴、本当にごめんな?」

「うるさい! あんたなんか、あんたなんか……優し過ぎるよ」

「え?」

「あたしなんかほっといてよ。嫌いにさせて!」


真琴はよく分からない事を叫び、部屋を出て行ってしまった。何となくだが、後を追っちゃいけないと俺は思った。

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