偽装結婚の行方
俺が彼女の願いを聞き入れたと分かってホッとしたのか、河内尚美さんは「そうよね?」と言って嬉しそうに微笑んだ。すごく可愛い顔で。


「さすがによく似てますね」


と言ったのは河内尚美さんの右隣の男性。たぶん彼女のお父さんだろう。


「ほんと。特に目と顔の輪郭がそっくり」


続いてそう言ったのは、河内尚美さんの左にいる女性で、たぶん彼女のお母さんだと思う。それはそうと、お二人はいったい何を言ってるのだろうか。“似てる”って、誰が誰にだ?


俺がキョトンとしていると、

「涼、ごめんなさい」


と、河内尚美さんが申し訳なさそうに俺に言った。謝られても、俺には何の事か分からないのだが。


「私、どうしてもこの子を産みたかったの」


と言われても、だから何なのかさっぱり分からず、俺はやはりキョトンとしていたのだが……


「この子、あなたの子なのよ?」

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