偽りの愛は深緑に染まる

 そろそろ戻ろう、と振り返った時。

 長身の男が、反対側の廊下の突き当たりにいた。

 ーー佐渡山崇だ。

 彼は梨沙をちらっとだけ見て、側にあるドアを開けて中に入り仕事に戻った。

 ドキッとした。昨日の電車のことがよみがえる。今日はじめてまともに見た佐渡山は、やっぱり昨日の電車の男に似ていた。
< 17 / 60 >

この作品をシェア

pagetop