その結婚、取扱い注意!
「そんなに変わっていないですか? 田代部長にも言われてしまったんですけど」
「髪は伸びているけれど、雰囲気はぜんぜんね」

ガクッと肩を落とすのを見て笑った松下さんは腕時計をちらりと見る。

「戻らなきゃ。こっちの方まで用があって来たから寄ってみたの。元気そうで良かったわ。しっかり田代部長のフォローを頼むわよ」
「え、は、はい! お疲れ様でした」

松下さんは「またね」と言って颯爽とした足取りで出て行った。

前から仕事は出来た人だったけれど、真剣さが足りなく、田代部長に指摘をされて本社の予約課に配属された。
今日の松下さんは最後に会った時よりも輝いて仕事を楽しんでいるように見えた。

良かった……。

自然と笑みがこぼれてくるのをおさえられなくて、微笑んでいた。

営業企画室のドアが開き、書類を抱えた田代部長が戻ってきた。
壁にある予定表の自分の場所に航空会社の名前を書きそのあと直帰と書いている。

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