封船屋
「どうぞ、ゆっくり見ていってね。」

そう言うと、レジの近くにあった揺り椅子によいしょ、と言いながら腰をかけた。

まるで彼女の為に作ったのかと思うほど椅子はぴったりだった。
とてもよく使い混まれているのが遠くからでも分かった。

近くに本が数冊詰まれている。何の本かまでは分からなかった。
椅子に座り、リズム良くゆっくりと揺れながら目の前の女性が人が、読書している光景が目に浮かんだ。


「ここは骨董品やさんですか?」

とりあえず、気になっていた事を聞いてみた。

「そんな骨董屋なんて、素晴らしいものばかり扱うような、大層なお店じゃないのよ。
実際は趣味で集めた物や、気に入ったものを並べて飾ってるだけのようなものよ。
だから、全部が売り物ってわけじゃないのよ。」

そう言ってにっこりと彼女は笑った。
優しくて暖かい笑顔と声だった。


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