冷たい上司の秘密の誘惑
【光世side】

今夜は、急いで帰っても、美穂はいない。

友人と食事に行くと言っていたから、

まだ今頃は、楽しく雑談中だろうな。


…最近の美穂は、たくさんの事を怖がって、

どこにも行く事をしない。

買い物ですら、一緒じゃないといけないほど、怯えていた。


だから、友人との食事に行くと聞いた時には、

正直ホッとした。

少しは、落ち着いてきたんだろうと。


重かった心の重しが一つ取れた気がした。

今夜の仕事は捗りそうだ。そんな気持ちでパソコンと睨めっこをしていた。


…午後9時過ぎ。

突然の着信音。…ディスプレイは、美穂となっていた。


「もしもし、美穂?」

「…ガチャ・・・ヤッ!…離して」

「?!」

オレは耳を疑った。

これは美穂からの電話ではなく、誰かと争って

その拍子に、たまたまオレの携帯に入った着信のようだった。


「おい!美穂?!」

叫んだところで、オレの声が、美穂に届くわけもなく。

…美穂の居場所が知りたくて、とにかく耳を澄ませた。
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