極上エリートの甘美な溺愛
くすくす笑いながらも、それを楽しんでいる篠田。
沙耶香に脅されていたと言いながらも、きっと二人の間ではそうするのがお互いのためには一番いいと決めてのことだったんだろう。
社内どころか、雑誌で紹介されるほどその名前を世間に知られつつある篠田と付き合うには、我慢しなければいけないことも多いに違いない。
沙耶香にしても、篠田とのことを秘密にしたくてそうしていたわけではなかっただろう。
そうでなければ、わざわざ篠田の車に自分のピアスを落とすなんてこと、するわけがない。
入社以来、篠田のことを自分に秘密にしていた沙耶香に対して寂しい気持ちがないわけではないが、それでもやはり、玲華は目の前の篠田を見ていると、沙耶香の気持ちもわかる気がした。
仕事でかなりの実績を挙げていることからくる自信と余裕が加わった見た目からは、女性だけでなく男性をも惹きつける魅力が感じられる。
これまで見ることがなかった、照れている表情からは、子供っぽさが見えて、意外にもどきりとした。
仕事だとはいえ、何度も二人きりで過ごしたというのに、今初めて篠田の本来の姿を見たような気がして。
玲華は思わず口を開いた。
「篠田さんって、格好よかったんですね。……あ、それはわかってたんですけど、えっと、沙耶香の方が私よりも早く気づいてたんですね。本当、篠田さんかわいいっていうか、あ、ごめんなさい」
小さく笑って肩をすくめる玲華に、篠田は眉を寄せて厳しい視線を向けるが、口元は笑いをこらえているようにも見えて、玲華はほっと息をついた。
いつ、何をきっかけに沙耶香が篠田を好きになったのかはわからないが、どれだけ一緒にいても気付かなかった篠田の魅力に、沙耶香はすぐに気付いたに違いない。
そして、思いが通じ合って、更に篠田への気持ちは強くなり、離れたくないと思うようになったはずだ。
そうでなければ、何度も篠田の車にピアスを落とすなんてことするわけがない。
そのピアスによって牽制しようとした相手は玲華だけではないはずだ。