極上エリートの甘美な溺愛
玲華は図面を描き上げて、沙耶香とふたり、食堂で昼食をとっていた。
午後から篠田と一緒に展示場に出向くことになり、急いでいるのだが、どうしても沙耶香に相談したい事があって、普段通り一緒に食べているのだ。
普段通りの会話をどうにか続けながら、どう切り出せばいいだろうかと悩みつつ、向かいに座る沙耶香に何気なさを装って口を開いた。
「あのね、申し訳ないんだけど、私……二次会の幹事を抜けてもいいかなあ」
「え?どうして?」
驚く沙耶香に構うことなく、玲華は言葉を続ける。
「正直言って、将平と気まずくなっちゃって……、今会うのはつらい」
「気まずくなったって、え?何があったの?二次会の景品を買いに行くってあんなに嬉しそうにしてたのに」
「うん……」
探るような沙耶香の声に玲華は小さな声で答えるが、その声は弱々しく、今も玲華の気持ちは将平に向かっているとすぐにわかる。
「何があったのよ。将平くんだって玲華のことを気に入ってる感じだったのに、いきなりどうしたの」
予想はしていたが、沙耶香の強い追及に玲華は苦笑し、夕べ将平と交わしたキスのことや、その後「わるい」と言われたことをかいつまんで話した。
キスのくだりはさらりと流し、深いキスを何度もかわしたことはさすがに恥ずかしくて言えなかった。
「謝られたことが思った以上にショックで。高校の時に振られた時と同じ言葉だったから余計に落ち込んじゃって」
すると、手元のオムライスをスプーンでかき回しながら涙声で呟く玲華を見ていた沙耶香は、呆れた声をあげた。
「謝られた理由が何かはわからないけど、拓人が玲華を送って行った時、将平くんにすごい目でにらまれたって言ってたよ。それに、キスなんてしちゃうくらいなんだから、将平くんだって玲華のこと好きなんだよ」
「そ、それは、そう言ってくれたけれど。将平は本当に私のこと好きなのかどうか……え?今、拓人って言った?沙耶香、それってまだ秘密なんでしょ?」
篠田との関係がばれるにも関わらず『拓人』と口にした沙耶香に、玲華は驚いた。