極上エリートの甘美な溺愛



午前中、篠田から沙耶香との関係を聞かされているとはいっても、沙耶香はその事実を隠したがっている。

だから、玲華も自分から沙耶香にそのことを突っ込んできくことはやめておこうと思っていた。

なのに、沙耶香は自らそのことを玲華に話している。

もともと、沙耶香は篠田との関係を連想させるものを小出しにしていた。

その最たるものがピアスだったけれど。

言葉の端々や、篠田との関係を探る玲華に対する曖昧な答えや俯く仕草。

はっきりと答えることは避けながらも、沙耶香の中にある篠田との付き合いを公にしたいという願いを何度も感じ取っていた。

それでも玲華が詳しく追及しなかったのは、秘密にしなければならない理由があるのかと感じていたからだ。

できれば沙耶香自らその意志で、篠田とのことを教えて欲しいとも思っていた。

そう思っていたせいか、玲華は沙耶香が篠田のことを『拓人』と明るく呼ぶことに、かなり驚いた。

「ふふっ。さっき、拓人から玲華にばれたってメールがきたのよ」

「あ、そうなんだ……あのね、ずっと聞きたかったんだけど篠田さんの車に、沙耶香のピアスが落ちてたけど……?」

「ん。玲華にばれるように、わざと落としたんだ」

えへへと笑う沙耶香につられて、玲華は思わず噴出してしまった。

拓人を狙う他の女性に対してならともかく、玲華に対して牽制にも似たそんな行為をしていたなんてと。

玲華は呆れながらも大きく笑った。

「もう、それなら直接言ってくれればいいのに。私、ちゃんと黙ってるよ」

「ごめんごめん。何度ピアスを落としても気付かないから、私も面白くなっちゃって、調子に乗ってたの。だから、さっき拓人からのメールを見ても驚くどころか、やっとだーってほっとした」

「面白くなったって……私をからかわないでよ」

「ごめんごめん。玲華ってあれだけ拓人の車に乗ってるのにぜーんぜん気づかないんだもん、本当鈍感と言うかかわいいというか」

沙耶香はすっきりとした声で笑った。

< 155 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop