極上エリートの甘美な溺愛
「え?玲華をふったの?うそー。こんなにかわいい玲華をふるなんて、一体何者なの?」
「か、かわいくなんてないから」
適度にお酒が入っているのか饒舌な香里の言葉に、玲華は慌てる。
いよいよ結婚が間近に迫り、日々幸せオーラを振りまいている香里には怖いものなんてないような、誰も敵わないような強さがにじみ出ている。
高校に入ってすぐに付き合いを始めたという恋人との結婚は、香里にとってはずっと待ち望んでいた幸せへの第一歩で、周囲からのひやかしなどお構いなしに今の状況を満喫している。
玲華に対しても、仕事が忙しくても結婚はできるんだよ、とお説教じみた言葉をかけている。
それをうんざりとした思いで聞き流しながらやり過ごしている玲華にとって、今の香里の様子は見慣れたものだ。
とはいえ、将平の目の前で絡まれると居心地が悪くて仕方がない。
「だって、会社でも玲華って人気あるのにー。それに仕事もできちゃうしー。
私が先にお嫁に行っちゃうこと自体奇跡なんだからー。ふるなんてもったいなーい」
けらけらと笑いながら明るい声をあげる香里の手から、誠は「それくらいにしとけ」と言いながらグラスを取り上げた。
口では呆れた言葉を呟いているが、その瞳は優しく香里をとらえていて、お酒に酔っている彼女が愛しくてたまらないんだろうと、すぐにわかる。
「すみませんね。こいつ、いつも玲華ちゃんはかわいいかわいいって言ってるんですよね。仲良くしてもらってるのに、酔っぱらって、すみません」
「え、いえいえ。よっぽど結婚することが嬉しいんじゃないですか?高校時代からのお付き合いなんですよね」
「まあ。腐れ縁というか、なんというか。このままこいつと一緒にいることが一番の幸せだと思って結婚することにしたんですけどね。はは」
テーブルに残っている料理をおいしそうに食べている香里を優しく見つめながら、誠は照れている。