極上エリートの甘美な溺愛

そんな二人に羨ましげな視線を投げた玲華は、向かいの席から相変わらずじっと見つめてくる将平をちらりと見た。

高校時代からの付き合いを、結婚というひとつのゴールにまでつなげた香里と誠。

それに対して自分なんて……。

玲華は思いがけず胸に痛みを覚え、ふっと息を詰めた。

それは、高校を卒業すると同時に置いてきたはずの負の痛みだ。

それなのに、過去に何度も味わった痛みを今さら感じて、そしてその原因に違いない将平が目の前にいる。

玲華は今にもあふれ出そうな切なさと折り合いをつけながら、どうにか表情を作って視線を上げた。

すると、将平は玲華の記憶の中にある懐かしい笑顔を作り、メニューを玲華に手渡した。

「こうして玲華と酒を飲むなんて、信じられないよ」

「うん。私も……。それに、会えるなんて思わなかった」

「……そうだな」

「将平は、今も美保と……あ、別に、いいの。ごめん。えっと、私はチューハイでも飲もうかな……」

どこかぎこちない声をあげる玲華と、そんな玲華に寂しげな視線を向けた将平は、その後届いたグラスで『乾杯』と再会の音を鳴らした。



< 5 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop