恋愛論
「早紀」
学校に行くと、すぐに由宇に呼び止められる。
「気付かなくてごめんな。駅まで送ろうと思ってたのに…迷わなかった?」
あたしが頷くと、由宇は笑ってよかったと言った。
本当にこいつは…
自分よりも他人が中心で。
あたしとは正反対なんじゃないのかな?
「お礼何がいい?」
あたしが聞くと由宇は首を振る。
「べつにいいよ」
「いや、でもさ…」
あたしが、どうしてもと言うと困った顔をして答える。
「困った時はお互い様。何か俺が困ったとき助けてよ」
「はぁい」
それだけ言うと、由宇は教室へと向かった。
「おはよ」
後ろから仁美に声を掛けられるまで、あたしはそんな由宇をずっと見ていた。