レンタル彼氏【完全版】
今更まともな職場につけるようにも思えない。

中学すら行ってない奴なんか、面接で落とされるのがオチだ。


いつもはうるさいぐらいの美佳も、今日は到着するまでずっとタバコを吸っていた。


「着きました」


運転手がそう言いながらミラー越しに俺達を見た。
外には小太りの冴えない男が立っていた。


その男がいそいそと車のドアを開ける。

「あ、佐々木君、おはよ」


「…美佳さん、お早うございます」


ちっせえ声だな。
何言ってんのか、こんな近くにいんのにわかんねえよ。


その佐々木の横をすり抜けて車から降りた。
美佳も続く。


このマンションは最近出来たばかりの、結構な高級マンションだって聞いたけど。
他の住宅を見下ろすように立ちそびえる建物を見上げた。



「社長、待ってます」


「うん、ありがとう。
さ、行こう伊織」


「…ああ」


美佳の後ろについていくと、佐々木まで後ろについて歩いた。


「佐々木君、どう?伊織は」

エレベーターに三人で乗り込むと、唐突に美佳が話しだした。
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