レンタル彼氏【完全版】
「……ん、……ん…?」



泉がうっすらと、瞳を開く。



「………い、おり?」


「…何?」


寝起き、すぐに俺の名前を呼ぶ泉が堪らなく愛しい。



髪の毛を撫でている俺の手に、泉は自分の手を重ねる。

それから

「…夢、じゃなかったんだ」

そう、言ってにこっと笑った。



「…夢、じゃないよ」


「うん」



泉は俺の返事に安心したのか、また静かに瞳を閉じるとすぐに寝息をたてた。






自分に、誰かを愛しいと思える心があることをただ嬉しく思う。


狂って、嫉妬に塗れたあの時とは、明らかに違う。






…ふと、視界にうつった携帯としわくちゃのお金。


今日、泉が持って来たモノだった。



あの、別れの日ははっきりと覚えていた。




泉の首を締めた後、二度と会わないとの決意と、誓いをこめて置いて行った携帯だったから。


その真っ黒な、携帯を見る。





それから俺は既に携帯を解約しているから、電源がつくこともなく、動かない自分の携帯を取り出した。



手に取った、真っ青な携帯。
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