レンタル彼氏【完全版】
“浜田泉、16歳、A型、誕生日は6月6日”



昔、俺に泉は自分を知って欲しいと自己紹介を勝手に始めた。


その時。


“好きな食べ物は煮物、嫌いな食べ物はバナナ、好きな色は青”


そう、言っていた。



よく、覚えてたと自分でも思う。


だけど、泉が好きな色なのかと。



無意識の内に真っ青な携帯を選んでしまっていたのは俺だった。




契約した後、その真っ青な携帯を見て自嘲したのを覚えている。



どこまで俺は泉を好きなのだろうと。



あまりにもバカげてると思った。




忘れたいと、離れたくせに。


レンタル彼氏をしていて一番使う携帯を、わざわざ泉の好きな色にしてしまうだなんて。




きっと、俺は泉を忘れる気なんかなかったんだろう。

そうでなければあの行動の理由が説明出来ない。






もしも、泉が戻ってきてくれるのなら。


何度も何度も考えた。



夢みたいなことだと何度も考えた。



その度、苦しくなっていた。






俺は泉の背中に腕を回して、幸せを噛みしめるように抱き締めた。


もう、苦しむ必要なんかない。
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