レンタル彼氏【完全版】
飲み物と、アップルパイをトレイに乗せて和は戻ってきた。



「うー寒いね、本当」


そんなことを言いながら、和は熱々のアップルパイを口にした。



「あちっ」


「ははっ、和慌てすぎ」


「うー舌火傷した」



眉をひそめながら舌を出す和。
私は笑いながら、自分の飲み物を差し出す。



和はありがとうと言いながら飲み物を受け取った。




「和」


「ん?」



和は舌を冷やすように、ゆっくりとウーロン茶をストローで吸いこみながら私を見た。





「あのね、伊織と付き合うことになった」


「ぶっ!?」



私の言葉に吃驚しすぎた和は、吸っていたストローを思い切り吹いた。
ごぼっと空気がカップの中で破裂する音がする。





「え、いや、は?」


「だから、伊織と付き合ったの!」



簡潔にそう言う私に、和は目を薄く閉じてじとーっと見た。



「………それは、まさかのあの、伊織とうまくいったってこと?」



確認するように和が聞く。

そりゃそうか。
あれだけ思うしか出来なかった私と伊織が、急に付き合ったって言うのだから。
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