レンタル彼氏【完全版】
無我夢中で自転車をあの駅前まで走らせた。


待ち合わせをしたわけでもないのに、何故か伊織はあそこにいると思った。



いつものファーストフード店。
そこに伊織はいた。

やっぱりいた。



今日は中にいなくて、外にいる。
壁にもたれかかっている伊織は絵になった。



キラキラ光る髪の毛。
透き通った白い肌。
すらりと伸びた手足。
ほどよく筋肉がついた体。


文句なしの見た目。



はあはあと息を切らしながら、私は伊織を見つけて自転車を降りた。

近くへ行く前に伊織が私に気付いた。



「…泉」


「伊織っ」



伊織はほっとした顔を見せて、私に小走りで近寄ってきた。


私は自転車をお店の前に置くと、伊織と向き合った。
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