レンタル彼氏【完全版】
「…………何か言うことは?」


「え?」


まじまじと伊織を見ると、すこぶる機嫌が悪そうにも見える。


「………ご、めんなさ…い?」


「何で疑問系?!」


伊織は語尾を強めながら私に言い寄った。
ひぃーっと、目を瞑って伊織のパンチやらを覚悟してたのに。



「……………」



伊織に強く抱き締められていたんだ。

ドキドキと私の胸が高鳴る。
と、同時に顔も熱くなっていく。



「…い、おり?」


「…………」


黙っている伊織の体は少し震えていた。


「……俺のこと拒絶すんなよ」


「え…」


「泉はずっと俺を受け入れろ、わかったか?」


「……う、ん」


「なら、許す」



そう言いながら私を自分から剥がすと、腕を掴んで歩く。

まだ、イマイチ状況がわからない私は黙ったまま伊織に着いて行った。
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