『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——
メモを書いた人の目星がついたのですか、

いつものように足音をたてずに寄ってきた西森がささやいた。


今日僕は本を読んでいない。


昨夜その可能性に気づいて、西森にそうメールを送っていた。

最初、そのイメージはざらっぽい手ざわりをともなってあらわれた。


「この字に見おぼえがあった。きみはどうだろう」

「字、ですか」

僕の隣に腰をおろした西森が、ことりと首をかたむける。


西森の視覚の記憶をもってしておぼえがないとなると、自信がゆらいでくる。

鞄の中から一枚のプリントを取り出す。質の悪い紙だ。ざらつくイメージをとっかかりに、たどりついた字の正体は化学のプリントだった。
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