『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——
西森がつと立ち上がり、塔屋のへりに足をすすめる。

手すりのような親切なものはない。申し訳ていどの立ち上がり部分があるだけだ。

西森は身をかがめ、こちらに背をむけたまま、立ち上がりに腰をおろした。足は向こう側に投げ出している。

その下には何もない。正確にいうと、建物六階プラス塔屋の高さを下りれば、地面がある。

西森が上体をひねって、こちらをむく。


終さん、とささやく。

「いま、わたしの背を軽く押したら、投身自殺体の完成ですね」


「それは美しくない」

僕なりにゆずれないこだわりがある。


「とても———眺めがいいです」
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