Sweet Room~貴方との時間~【完結】
「改めてプロポーズさせてください。佐伯奈央美さん、僕と結婚してください」
 私の右手を持ち上げて、ぬいぐるみをそっと乗せた。そのテディベアの左腕には指輪が填まっていた。
「これ、指輪?」
 キラキラ輝くダイヤが付いた指輪。それを指で撫でる。少し視界がぼやけ始めた。
「貸して」

 涼太がテディベアから指輪を抜き取ると、左手の薬指に填めてくれた。それはサイズがぴったりだった。
「サイズ、ピッタリ。どうして?」
「前、俺の部屋に指輪、忘れていっただろう? その指輪の号数を姉ちゃんに調べてもらった。いつも右手の薬指に填めてたから、左手も変わらないだろうと思って」

 確かにそんなことがあった。付き合い始めたころ、料理をする前に外した指輪を洗面所に忘れてしまったんだ。つまり、そんなに早くから私との結婚を意識していてくれたんだ。

「ありがとう。どうぞよろしくお願いします」と言って、私は涼太の首に腕を巻きつけるように抱きついた。久しぶりに感じる涼太の体温は優しくて温かい。
 涼太の腕が私の背中に回り、ぎゅっと力を込めてくる。
「よろしくお願いします」
 耳元で聞こえる涼太の声は、いつも以上に優しかった。

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