Sweet Room~貴方との時間~【完結】
 料亭に着くと、予約した個室に案内された。そこには宏実さんと旦那さんが来ていた。
「ナオちゃん、久しぶり。うちの弟を見捨てないでくれてありがとう」
 宏実さんは相変わらず、私に抱きつきながら言った。
「姉ちゃん、何だよ、今の」
「あんたがちゃんとしないから、ナオちゃんと危ない感じになったんでしょうが。離婚したら、姉弟の縁を切ってやる」
「また、それかよ。てか、入籍前から縁起でもないこと言うなよ」
「ふん! 仮に2人が別れるようなことになっても、ナオちゃんは一生、私の妹で友達なんだから。いいでしょう? 羨ましいでしょう?」
「はあ? 俺は一生死ぬまで奈央美の夫だし、奈央美は一生死ぬまで俺の妻だから」
 自分がかなり恥ずかしい愛の告白を言ったことを、涼太は全く気が付いていない。2人の会話はますます派手になっていく。個室でよかった。

 2人のやり取りをにこやかに眺めているこの男性が宏実さんの旦那さんか。イケメンだ。宏実さんに会ったとき、よく旦那さんの話が出てくる。写メを見せてと言ったら、大きなゴールデン・レトリーバーに押し倒されている写真で、顔がほとんどわからなかった。よりによって何でこの写真を見せてきたのだろうと思ったけれど、多分、独占欲と照れ隠しだったんだろうと思った。

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