Sweet Room~貴方との時間~【完結】
 美味しそうにコーヒー牛乳を飲む杉山の後ろを、まだ開けていない缶を両手で握りながら歩く。
 何で、こんなに優しいのよ。私は杉山の優しさに弱いらしい。恩着せがましいこともなく、寄り添うような優しさ。

「美味しい。堪にはいいかもしれませんね。甘いコーヒーも」
 私の顔を見た杉山が一瞬、困った顔をして、少しクシャクシャになったハンカチをポケットから出した。
「どうぞ」
 よく分からないけど、何故か流れてしまった涙を拭いた。

「杉山、ありがとう。ハンカチ、洗って返すね」
 少し前を歩く背中に向かって言う。

「はい。お願いします」と杉山はこっちを見ず、前を向いたまま言った。

 事務所に着くまで私たちは何も話さなかった。
 杉山のハンカチとコーヒー牛乳を握り、広い背中を見つめながら歩いていた。

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