Sweet Room~貴方との時間~【完結】
 事務所に戻り、社長と松下さんに報告をすると、杉山は松下さんに揉みくちゃにされていた。

「今回は杉山のアイディアがよかったんです。男性の心情をよく捉えていますから」
「そんなことないです。佐伯さんの助言のおかげですから」と、杉山は絡んでくる松下さんを払いながら言った。

 あまりに弄られている杉山がかわいそうになり「松下さん、いい加減、杉山を離してあげてください」と言ってあげた。
 解放された杉山は髪を直しながらデスクへ戻った。

「杉山、飲みに行かない? お疲れ様と、これからも頑張りましょうってことで」
「はい。行きましょう」

 嬉しそうに笑った杉山は、犬みたいに私の後ろに付いてきた。



「乾杯! ああ~、美味しい」

 私が友だちとよく行く居酒屋『秋水(しゅうすい)』に、杉山を連れてきた。
 ああ、落ち着く、ここは。

 後輩を連れて来るなら、ちょっとお洒落な隠れ家みたいなバーとか小料理屋とかにするべきなんだろうけど。私はそういうお店を知らない。小洒落た所でお酒を飲んでも、肩に力が入って美味しくも楽しくもない。飲み食いは飾らないのが一番。

 私がこういう店を連れて来たことに、少し驚いているのか居酒屋を見ている。
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