Sweet Room~貴方との時間~【完結】
「あ、お昼どうします。作るのも面倒だし、ピザでも頼みましょうか?」
「そうだね」
 ネットでモッツァレラチーズとトマトのピザを頼み、それを食べながらDVDを観た。

「ねえ、この家のデザインいいわね」

 今、観ているファンタジー映画は内容もなかなかだけれど、それ以上に衣装や家具のセンスがいい。
 主人公の男が住む、小さな箱のような家。外観はドアと窓しかなくて、すごくシンプル。中は壁、一面が棚になっている。そこには本や写真、置物、帽子や靴が並んでいた。いわゆる、見せる収納。

「はい、いいです。住む人の全てがインテリアになる家。家って、その人の生き様ですよね」
「うん。本当、生き様だよね。最近、兄が婚約したって言ったでしょ。兄は骨董品店をやっていて、お店は博物館みたいに豪華なの。でも自宅は殺風景で、睡眠のための部屋って感じなの。ベッドとタンスと机くらいしかなくて。でも、晴香(はるか)ちゃん、あ、兄の婚約者の名前なんだけど。晴香ちゃんが一緒に住むようになってから、部屋が明るくなったの。淡いグリーンのテーブルクロス、ミルクティー色のソファ、窓辺に置かれた小ぶりの観葉植物。結婚するって、お互いの人生が、過去も現在も未来も全部、混ざる事なんだなって、部屋を見て思ったんだ。そういう建物を作る仕事に携われている私たちって、幸せよね」
「そうですね。幸せです」

 今の私は幸せの近くにいるのだろうか。それとも真逆にいるのだろうか。そんなことをぼんやりと考えながら、映画のエンドロールまで見ていた。

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