Sweet Room~貴方との時間~【完結】
 ただテーブルを見つめていると、後ろから靴の音が聞こえてくる。
「杉山」
「佐伯さん、行きますか」
「うん」


 車に乗ってもお互いカフェでのことは一切話さなかった。2人がどんな話をしたのかは気になるけれど、聞かないことにした。もう終わったこと。だから、もう気にしても意味がない。

「これからどうします? 昼でも食べます? その前にどこかに行きますか?」
「ここの近くによく行く雑貨屋さんがあるんだ。ちょっと行ってもいい?」と杉山に返した。
「わかりました。ナビお願いします」
 雑貨屋さんは休日ということもあって、少し混んでいた。中には女性が多い。

「杉山、ここ。どうする? 杉山は車の中で待ってる?」
「どうしてですか? 俺も一緒に行きますよ」
「男の人って、こういうところ退屈じゃない?」
「いや、ジュエリー・ショップのデザインをやって、女性が興味を持つものも少しは知っておくべきだな、と実感したんで。それに男1人で入るのには、ちょっと勇気がいるんで、佐伯さんの買い物に託かこつけて行きたいんですけど」
「そう。じゃあ、一緒に入ろう」

 心の中で「仕事熱心ですこと」と小さな嫌味が浮かぶ。これを言えるのは彼女だけだよね。

 雑貨屋さんの中に入ると、杉山は内装などをじっくり見ていた。私は杉山を放置して、お目当てのアロマコーナーに向かう。
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