soda
[1]転勤先
風景が高層ビルからスーパー、畑へと変わっていく度に、貧乏揺すりはかたかたと激しくなっていった。

「僕、香奈子ちゃんとこの子?」いかにもフレンドリーな田舎のおばあちゃんが各駅停車のワンマンボロ電車の中で声をかけてきた。

…………香奈子…?母さんか。

母の名前を一瞬忘れかけていた俺は車窓を見つめながらハイ、と答える。
「やっぱりねぇ。香奈子ちゃんは村一番のべっぴんさんだったから一…」
そうね、そうねと言いながらにこにこと…ナントカ中学前で降りていった。

……
…………。
……………………。


がたんごとん、がたんごとん。不器用な子守歌を聞きながら、窓から入るあったかい風の心地よさに負けて、目を閉じた。


初夏の暑い朝だった。


< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop