「1495日の初恋」

もう一度あの日に帰って





卒業式の前日に、私の元に来た上原くんの教科書。


私への「貸し」を教科書に全部詰め込む形で、一方的に置いていった。

私がそれを受け取ることで、本当に「借り」を返したってことになる…?



あの時、上原くんは遠くの学校に行くことが決まり、私には彼氏がいた。

きっと、今までのすべてを終わりにしようと、思っていたんだろう。


この教科書だって、捨ててしまえば終わりになるはずだ。

だけど、それをしなかったって言うことは、あの頃の上原くんの、精一杯の意思表示だったわけで…。


バカな私は、その意味さえわからなくて、手の中の教科書を見つめるしかなかった。


結局、綾香や矢島くんのおかげで、自分の気持ちを伝えることができたけれど、もしかしたら、一生「好き」って言えなかったかもしれない。



一生、上原くんのメッセージに気付けなかったかもしれない。

一生…交わることなく人生を生きていたかもしれない。





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