縛鎖−bakusa−
 


重たい鎖の音。

不気味な冷笑。

一週間振りにそれを見て、私の心にまた沸々と悔しさが沸いて来る。



彼を見ながら想いが口を付いて出る。



「クヤシイ…」



『ソウダ…それが俺の想い…』




弟が消してくれた黒い想いは、たちまち根を広げ枝を伸ばし、大樹へと成長してしまう。



「クヤシイ…ユルセナイ…」



『そうだ…それがキミが背負った想い…

千歳…あの女からノートを奪い返して…』




――――…


隅に積み上げられた椅子を一脚持ってきて、教室の真ん中に置いて座った。


窓の外は暗い雨。それを眺めていた。



山本先生は来る。

水谷徹のノートを手に、必ずここへ来る。



彼女が自分の大罪を認めていると分かった。


私の言葉に怯え、恐怖する姿を見れば、自分がどれ程の事をしたのか…

その意味を理解していると確信していた。



彼女は必ず来る。

恐怖の感情に背中を押され、逃げる事は出来ずにここへ来る。



椅子に座り外を見続ける事一時間。

背後で教室のドアがカタリと鳴った。



『キタ…』

水谷徹が私の隣で薄ら笑う。



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