妖精デジタるーと
1話 途切れ途切れの未来
この世に世界は2つある。

人間が暮らす人間界と吸血鬼や妖精が暮らす魔界だ。

その境にあるのが、人間以外はいつでも出入りできるルート。

闇黒の魔。




「今日もさっむいねー」

「はっ…寒さなんて感じねー」


「こら、牙しまってください」

血筋の同じ人間にしか見えない吸血鬼。
なのに猫型で可愛い顔のヘルメンは、口の悪いメルヘンな紳士。

いわゆる多重鬼格。
人間で言う多重人格。




闇黒のルートを通ると、そこは吸血鬼が浮上していて、色はパステルカラーの世界。


「いいですか、キチンとしてくださいね」

「そーゆーのきらぁい」

「また、そんなことを言う」


25歳のうるさい大人。
奏斗。

スーツ姿に眼鏡をポッケに掛けて、キリッとした目。

お節介がくどい。

吸血鬼について回る浮上力のある執事。

普通の人間だ。




遠いルートをくぐり抜けるのには一苦労。

パステルの世界には空からが抜け道。


「もーっう!!せっかくー服直したのにぃーー!!!!」


飛ぶ力がない者は、落下するのみ。

浮上力のある者に掴まれば浮くのだが…。


「ちょっ!またか…」


人間世界に元々生存する巫女姿の中学生。
音色。

お転婆ってよく言われる。
大人が嫌いで、説教を嫌う。

だから奏斗は大っ嫌い。


「何故手を放すのですか!!!!!!!死にたいのですかぁ?」

「うるさーいよー。バーカ」

「空は危ないので、お仕置きは後ほど」



お姫様だっこをする執事の奏斗は鋭い目のまま視線を逸らした。


嫌いにはなれない。



そんな掟がある。
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