過保護な妖執事と同居しています!


 会社は辞めなくてよくなった。辞めるなと言うのを押し切ってまで辞めると本郷さんが気に病むだろうと思う。

 しばらくは気まずいだろうけど、時が解決してくれるだろう。

 それにしても私がザクロを好きなこと、本郷さんにバレてたのは驚いた。そんなにわかりやすいんだろうか、私。

 でもザクロには通じていないような気がする。私の心の状態は丸見えのはずなのに。

 もしかしてザクロは恋愛感情がどういうものかわかってないのかな。なにしろ人の心を理解していなかったわけだし。

 私がザクロの言動にきゅんとしてたりドキドキしてたりしても、単に喜んでるとかうろたえているとしか思ってないのかも。

 なんか、前途多難っていうか、お先真っ暗っていうか……。
 思わずため息をもらすと、目の前でザクロが不思議そうに首を傾げた。


「何か悩み事でもあるんですか?」


 目の前に悩みの種があるんだけどね。とは言えず、私は曖昧な笑みを浮かべる。


「ううん。今週は色々忙しかったなぁって思い返してたの」
「そうですか」


 今日はザクロの要望で故郷の山に向かっていた。いつも電車の中では姿を消しているザクロが、車内が空いているのでボックス席で向かい合わせに座っている。

 人が増えてきたらいつでも姿を消せるように、私にしか見えていない。燕尾服で鈍行列車に乗っている執事もシュールだ。

 結局ほとんど人は増えなかったので、私は時々小声でザクロと言葉を交わしながら目的地にたどり着いた。

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