過保護な妖執事と同居しています!


 今日は一日ザクロと過ごすつもりなので、実家には連絡を入れていない。実家へ向かう獣道の途中からすぐ山道に入った。

 林の木々はまだ冬の佇まいで、正月に来た時と同じ葉を落としたままだ。けれど枯れ葉に覆われていた地面には、所々下草の緑が見えて少しだけ春の近いことを感じさせた。


 少し奥に入ったところでザクロは私の前に回り、背中を向けてしゃがんだ。

「どうぞ、お乗りください」


 やっぱり飛んでいくのね。ちょっと苦手なんだけどな。
 私はザクロの持っていたリュックを背中に背負って、彼に負ぶさる。


「よろしく」
「かしこまりました」


 返事をして立ち上がったザクロは、地面を蹴ってふわりと浮かんだ。やっぱり怖いので、私はザクロの背中に顔を伏せて目を閉じる。

 耳元に風を切る音がする。時々伝わる振動は、この間の時みたいに木の枝を足場にしているのだろう。

 やがて振動がなくなり、風の音が強さを増した。林を抜けたみたいだ。今目を開けたら絶対怖い。

 しばらく風の中を進んだあと、ザクロがストンと降り立ったのがわかった。恐る恐る目を開く。そこは正月に初日の出を見た、山の頂上にある三丈岩の上だった。


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