狂妄のアイリス

狂妄

 少女はもう昼だというのに布団の中に潜り込んでいた。

 いくら寒い季節だとはいえ、頭まで潜り込んでいては蒸し暑く息苦しい。

 それでも少女は布団を体に巻きつけて、解けないようにきつく抱き込んでいる。

 布団の外からは、怒鳴り声が聞こえた。

 布団越しでも衝撃が体に伝わり、まだ生乾きの傷が痛む。

 布団の外では、少女の母である女が布団に馬乗りになっていた。

 馬乗りになったまま、布団越しに少女を責め立てる。

 金切り声で発せられる罵詈雑言は最早意味を成さない。

 拳で布団を殴り、ベッドサイドにあった時計も投げつける。

 少女は布団の中の暗闇で、自分の腕に噛みついていた。

 声を殺し、ただ耐える。

 女の気が済み、暴力が止むのを待つしかなかった。
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