3つのR


 唖然として私はぽかんと口を開く。・・・凄いこと考えるのね、お姉ちゃんたら。それぞれが大人になって離れて住んでいる間に、元々勝気だったとはいえ、私の姉はえらく野生化したようだった。

 学生時代から私とは正反対で明るく行動的な姉は、付き合う男性もよく変わっていたのを知っている。だけど結婚したいと思うような男にはめぐり合わなかったのよ、そう笑って、33歳で会社を退職し、翻訳家として独り立ちしたのだ。

 それからは一緒に住んでいるけれど、この3年間で姉が誰かと付き合っているような雰囲気はなかった。私のことより自分のことは?そう言いかけて、私はまた言葉を飲み込む。

 姉が自分の私生活を後回してにしていること、その原因は離婚して病んで戻った私だと知っていたからだ。


「とりあえず、私はあいてますって言ったけど」

 返事を待っている姉に、私はぼそっと返す。

「おおー!」

 いいぞ~!と叫んで、今度はわざわざ立ち上がって叫んだ。・・・本当、どうしちゃったの、この人。きゃあきゃあ~と判りやすい嬌声を上げてくるくると回り、姉はにやりと笑った。

「右田君、あの子はまだ若いし、かなりやんちゃなところがあるとは思うの。だけど、きっと悪い人ではないわよ。孝太君とはまた違った明るさがある。あんたには丁度いいと思うわ」

 ・・・まあ、確かに。元夫とは違う明るさ、それに引力がある人だとは思う。

 私が頷いてそうだね、と言うと、姉は拳を天井に突き上げて言った。


 
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