3つのR


 お姉ちゃんたら、見開いた目が飛び出しそうだわ。私はコーヒーカップを自分の顔の前に掲げて、姉の視線を露骨に遮る。

 朝食に出て、起きてたみたいなのに何をぼーっとしてたの、体調が悪いの?と心配してくれた姉に、龍さんから電話があったのだ、という話をしたところだった。

 彼女はいきなり興奮しだして、自分が作ったハムエッグを無意識だろうけどフォークで潰してしまっている。

「えーと・・・お姉ちゃん、お皿が汚いわ」

 私が指差してそれを伝えると、姉はふん、と鼻から息を吐き出した。

「煩いわね!うちの引っ込み思案で根暗で消極的の妹にようやく、ようや~~~く、新しい春が来たかもしれないって時に卵一つがなんだってのよ!」

「・・・」

 言葉が一々ぐさぐさと私に突き刺さっていたけれど、姉はそれには気付いていないようだった。・・・引っ込み思案で根暗で消極的・・・ううう。彼女のお皿の上の卵に私は心底同情する。あなたと私は、ほとんど同じ状態ねって。

 刺されまくってボロボロ。

「で、で?返事はどうしたの?勿論デート行くんでしょ?それにあの子には彼女はいないのよね?」

 私は浮気は断固反対よ、と姉は両手をずいっと前に押し出した。私は椅子を引いて物理的に彼女から距離を置き、ため息を吐いて言葉を返す。

「・・・特別な人はいないって言ってたけど。まあ・・・彼女はいないってことでしょうね」

「よし。特別な人なしってことは、勿論妻もいないのよね」


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