3つのR


 実際にその言葉を聞いた今、私は、スッキリしていた。

 彼に――――――――孝太君に、新しい恋人が。それは私をガッカリなどさせずに、じんわりとした温かさを生み出した。

「良かったわ、本当に」

 そう自分が喋っているのが聞こえた。

 高田君が見ている。心の底まで見透かすような、あの綺麗な黒い両目で。だけど、私は大丈夫だった。そして心の底から、思ったことを言えたのだ。

「彼に・・・大切な人がいるのね、それは本当に良かった」

 彼の愛嬌たっぷりな、あの明るい笑顔を曇らせてしまったのは私であると判っていた。だけど・・・ちゃんと新しい出会いがあって、彼がそれを拒否せずに受け入れているのならば。

 ・・・こんなに安心することって、あるかしら。そう思ったのだ。

 すっと肩の力が抜けたのが判った。

 高田君にもわかったらしい。ちょっとよろめきかけたのを見て、大丈夫?と静かな声で聞くから、私は急いで頷いた。

「安心したの。それで・・・力が抜けちゃったわ」

 うふふ、と笑い声が出た。ああ、良かったなあ、そう思って涙ぐむかと思ったほどに、大きな安心を感じていた。

 会場の中から、皆ご飯とった~?って幹事の声がマイクで大きくなって聞こえる。戻らなければいけない時間だった。


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