3つのR


 少し眩暈を感じるけど、寝てしまえば大丈夫、そう思っていた。ご飯をたべて、お風呂はパスして寝てしまおう。本当はちょっとでも体を温めるのがいいのだろうけど、湯気でやられちゃうかもしれないし・・・。疲れの度合いを自分の中で量りながら門扉を開ける。

 ゆっくりと手を伸ばして玄関のドアを開けて、奥にいるはずの姉に声をかけた。

「お姉ちゃん、ただいま」




 阿達潤子という名前で26年間生きていて、それから学生時代からの恋人と結婚した。だけどその結婚生活がうまくいかず、28歳で離婚、実家に出戻りって形になってしまったのだ。

 しばらくはそのまま両親と家で暮らした。だけど、親の、出戻り娘に対する腫れ物にさわる感じが次第にイライラしてしまったのだった。

 十分な大人になったはずだったのに、子供と同じように相変わらず保護されている自分が情けなくて悔しかった。

 いうなれば、すれ違いの果ての離婚。私は最後に言いたいことを全部彼に投げつけて家を飛び出し、慌てた彼がやつれて迎えにきたり、せめて生活費だけはって大金が振り込まれたりで色々あったけれど、もう修復は難しかったのだ。

 不倫や物に対する価値観の違いなどではなく、お互いがお互いのことを思って行動した結果、巨大な孤独の空間が生み出されてしまったのだ。


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