双世のレクイエム
突然現れた彼女・ミケに驚声を上げる間もなく、二人の少女は並んでこちらに目を向けてきた。
その瞳は些か挑戦的なものに見える。
「あたしたちはノイジー・ファイトに出るつーもーり。ところところでっ、君たちは出るの?出ちゃうの?ノイジー・ファイトっ!」
興奮した勢いで高揚した眼差しを向けるオリトに、自然とワタルはエルに目を合わせた。
エルはジッとこちらを見ている。
その向けられる視線の意味が何なのか、はっきりと言葉には表せないが、感覚的に分かってしまう。
分かってしまうから、どうしようもない。
ワタルはゆっくりと頷いた。オリトはにっこりと満足そうに歯を見せる。
「そっか。うんうん、やっぱ将来のことも考えてるカンジ?にははっ、みーんなそんなことしか考えてなーいの?」
「…まるで自分は違うって言いたいようだね。オリトちゃん、だっけ?君は何のためにノイジー・ファイトに出るのさ」
少し眉をひそめてワタルは問い掛ける。
オリトは笑みを浮かべたまま、そして挑戦的な瞳をワタルに向けたまま、その真紅の唇をゆっくり開いた。
「ただの暇潰しよ」
こぼれた言葉は脳に響いた。
カツーンと金槌で殴られたようだ。
それだけ言うとオリトは背を向け、それから一度も振り返ることなく食堂から出ていった。
結局ミケは、最後まで一言も発さなかった。
ワタルの脳裏にふと、横文字に綴られたひとつの単語が浮かぶ。
オポジット(Opposite)
オリトとミケ。
騒音と沈黙。
まるで正反対な彼女たちに、ワタルはその単語がぴったりだと思ったのだった。
裏の浮かぶノイジー・ファイト、
なかなか面白そうだ。