双世のレクイエム
そしてまぁ色々あり、やって来ましたノイジー・ファイト!
あれから2週間が経ってからのこの学園名物だが、その前から生徒たちはそわそわしていた。
特に前日などは前夜祭だとか言って花火をばんばんやっていた生徒たちがいたとか…。
ちなみにその生徒たちは学園側に見つかってしまい、その後どうなったかはお茶の間の皆さんに失礼なため公表せずという方針にある。
さすがエリート校。
処遇もあざとい。
それはさておき、憑きもの三人衆を従えるワタルは会場である特設ドームの入り口にいた。
「すごい人だね…。これみんな参加者?」
<さあな。ほとんどが観客だと思うぞ。クエストクリアしてねえ時点で諦めてんだろう。な、リャオ>
<そうどすなぁ…。せやかて、それくらい強者が参加しとるっちゅうことやありまへん?>
<はあ?俺様の前じゃ強者も何もねえよ。俺様がいりゃあ百人力、ワタルが優勝に決まってんだろ>
「……。」
どこからそんな自信が出てくるんだ。
しれっとして言う豪蓮にワタルは呆れてものも言えない。
その隣では<さっすがレンちゃん!>と、けらけら笑いながら療杏が称賛していた。
…この二人には謙虚さというものが欠片もないのだろうか。
と、遠くからワタルを呼ぶ声が聞こえる。
「おーいっ、ワタル!」
「エル」
強烈で独特な挨拶も、今日はないようだ。少し拍子抜けだ。
脱力するワタルを前にエルは首をかしげたが、すぐにハッとしてワタルの腕を掴んだ。
「ここでボケーっとしてる場合じゃねーんだよ!ワタルは出場者なんだからこっち!」
「え、ちょ、どこ行くのっ?っていうかトイレ行きたい」
「いいから早く!」
なんて慌ただしい奴だ。
トイレの1つや2つくらいいいではないか。
…ああ、トイレが遠ざかってゆく。
尿意を堪えながら、ワタルは引かれるままにエルと会場の裏へ連れていかれたのだった。