ラベンダーと星空の約束
 


「大ちゃんが見つけた方が、良かったかもね」



「それは…困るよ…」




流星が忘れてしまったのは指輪を私に渡した事であって、

母親の形見のこの指輪自体は覚えているだろうから……




「それを見せたら、案外すんなりと記憶が戻るかもよ?」



「まさか…」




そんな都合よく行くはずない。



「何で君が持ってるの?」
と不思議がられ、

流星が自力で思い出す前に、私からあの夏を話さねばならなくなってしまう。

それは嫌だ。




「これ…まだ流星には見せられないから、本当に助かったよ。

拾ってくれてありがとう」



そう言うと、瑞希君は少し淋しそうに笑った。



瑞希君が戻り、
制服に着替えをすませた時、
ベッドの上でスマホが短く鳴った。


大樹からのメールの着信だった。



『朝、電話くれたか?

寝ぼけて、良く覚えてねーけど何の用事?

今なら起きてるし話せるぞ?』




まったく…

どいつもこいつも寝ぼけやがって…

今話しをしても意味が無いのに!



そうだ…大樹のせいだ。
流星に裸を見られたのは大樹のせいだ。



あの時電話に付き合ってくれたら、
朝風呂に入ろうなんて思わなかったのに。



大樹も流星も、
朝はスッキリ目覚めなさいよ、
バカ!





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