ラベンダーと星空の約束
 


流星はぎこちない笑みを残し、
110号室のドアの向こうへ消えていった。



ドアの閉まった後は、静けさが際立つ。



眠りに就くにはまだ早い時間なのに、柏寮はやけに静かで物音一つ聴こえない。



階段を上り二階の廊下をゆっくり歩くと、
ギィギィと床板が軋む音が響く。



部屋のドアノブに手をかけた時、ポケットの中のスマホが鳴り出した。



静寂の中にやけに大きく響くそのメロディに、ビクッとして慌ててスマホを取り出すと、着信は大樹からだった。



急いで部屋に入り、
ベットに座って電話に出る。



いつもの声が耳に入るとホッと息を吐き出して、
ベットにゴロリと寝そべった。



慣れ親しんだいつもの声が、久々に流星と会話した緊張をゆっくりとほぐしてくれる。



何故だろう…こんなに心地好い声なのに、

ホッと気を休めることの出来る声なのに、

安らぐだけで、心を熱くする事が出来ない。



何より大切な存在の大樹に、
恋をするのがこんなにも難しい。



『早く心の底から大樹に惚れてよ…』



さっきの流星の言葉が頭の中に木霊(コダマ)する。



大樹に恋をしないと。
早く好きにならないと……

流星の為にも、大樹の為にも、自分の為にも……




『何溜息ついてんだよ。
どうした?何かあったのか?』



「うん…シャワー室のボイラーが壊れたの」



『あ? そんなの直せばいい話しだろ』



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