ラベンダーと星空の約束
 


思い起こせば
会話の端々に何かを言い澱んだり、ごまかしたりする様子が多々あった。



それに気付いていたし、彼女の瞳の中に、ラベンダーと星空の…

あのメッセージカードの写真の風景が広がって見えた事もあった。



だけど、今まで彼女の嘘を見抜けなかった。




ゆかりちゃんが“紫(ムラサキ)ちゃん”だなんて、

そんな都合のいい事がある筈ないと…


あれは俺の恥ずかしい願望が見せた幻に過ぎないと…思うようにしていたんだ。




 『 待ってるね

       紫  』




あのメッセージカードを書いたのは…彼女。



紫(ムラサキ)ちゃんではなく…

“紫(ユカリ)ちゃん”だった…



事実に衝撃を食らった後は、
脱力してその場にしゃがみ込んだ。




深い溜息を吐きながら、
その箱を床に置く。


多分これは大樹からのクリスマスプレゼントだろう。

俺が代理で受け取るとは、思わなかったのだろうな。




配送伝票を眺めていた。



『紫』の漢字の読み…



辞書に書いてある読みは
『むらさき』と『し』。


『ゆかり』なんて読めない…

いや…

確か…小学生の頃に読んだ今近和歌集を解説する本の中に、こんな歌があった気がする。



『紫の ひともとゆゑに

   武蔵野の 

草はみながら あはれとぞ見る』




意味は確か……
むらさき草が一本咲いていると言う縁(ユカリ)だけで、武蔵野に咲く草花全てが愛おしく見える……



この歌から…
『縁(ユカリ)の色』は『紫色』を意味するようになったとか…

この歌が起源で『ゆかり』と読ませる場合もあったんだ……




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