ラベンダーと星空の約束
 


「うん、別に構わないよ。

慶子さん、流星はろくでなしじゃないですよ?

私には勿体ない位の最高の彼氏です」



そう言うと、慶子さんは目を細めて優しく笑った。




「最高かい…ハハッありがとね。

何でか分かんないけど、あたしゃこの子が可愛くてね…

4人目の子供みたいに思えるんだよ」




「マジ? 慶子さん俺の事息子だと思ってくれんの?」




「あんたがそうさせてるんだよ。毎日毎日甘えてきてさ。

まぁいいわ。やっと大ちゃんが笑える様になって、嬉しいよ」



「やっと? 俺、慶子さんの前ではいつも笑ってたつもりだけど?」



「あたしにゃ笑ってる様には見えなかったんだよ。

だから心配してたのさ…

あんたさ…大ちゃんじゃないよ、あんただよ。

ありがとね、この子を笑わせてくれてありがとう……」




「慶子さん…」



「さてと、洗い物やっつけてくるか。

あんた達も早く食べないと授業始まるよ」





慶子さんの瞳が潤んで見えたのは、気のせいだろうか…


瞬きを数回して席を立った慶子さんは、厨房へと戻って行った。



退院祝いにサービスしてくれた海老フライを味わいながら隣を見ると、同時に流星も私の方を向いた。




「流星、泣いてもいいよ?」



「泣かないよ、恥ずかしいじゃん。

けど…慶子さんと次顔合わせたら泣いちゃうかも……」




「ふふっ いいんじゃないの?
息子だって言ってくれたんだから。

はい、唐揚げとゆで卵半分あげる」





慶子さんを初めて見た時、
ショートヘアにキリッと濃い目に書いた眉毛が印象的だった。



古い映画に出て来る肝っ玉母さんみたいな人柄が、大樹のおばさんに似ていて、親近感を覚えたんだ…



「全くこの子は…」

なんて言いながらも、慶子さんは流星の事をずっと心配していた。



口には出さなくても、気にかけ見守り続け…

そして、今やっと流星が笑える様になったと喜び目を潤ませていた……



そのぶっきらぼうな優しさが、やっぱり大樹のおばさんに似ている。



こうやって障害を負わなかったら、慶子さんのあんな表情は見れなかったかも…




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